八戸市美術館開館記念
2021年11月3日(水)~2022年2月20日(日)
展覧会八戸市美術館は、1月26日(水)より2月28日(月)まで臨時休館ですが、2月2日(水)〜2月20日(日)の期間、人数と観覧時間を制限し、開館記念「ギフト、ギフト、」の予約限定観覧を受け付けます。
申込方法など詳細はこちらをご覧ください。
八戸市美術館は、「種を蒔き、人を育み、100年後の八戸を創造する美術館〜出会いと学びのアートファーム〜」をテーマに、2021年11月3日 (水・祝)に生まれ変わって開館します。
開館記念では、八戸を代表する祭りである「八戸三社大祭」を出発点に、10組のアーティストと1つのコレクションを迎え、アートを通して“ギフト”の精神を見つめる展覧会とプロジェクトを開催します。
300年の歴史を誇る八戸三社大祭は、祈願成就の感謝を込めて行った神輿行列が始まりです。明治時代に、地域の人々の手で毎年つくり替えられる「風流山車」が加わったことによって、創造活動を介したコミュニティが生まれ、現在でも人々の支えあいが育まれています。過去から未来へ、人から人へと巡る“贈与=ギフト”は、これまでの社会で求められてきた価値とは異なる豊かさを、これからの社会に生み出すヒントとなるでしょう。
本企画では、“ギフト”を道標に、地域のリサーチから着想を得た新作や浮世絵などの多彩な作品展示、作品や地域への学びを深めるプロジェクトが全館で展開されます。そこで出会うローカルかつ普遍的な“ギフト”の精神を、「100年後の八戸を創造する」ための種として見出し、あらゆる人たちと共に育んでいくことで、新たな美術館は第一歩を踏み出します。
浅田政志、江頭誠、大澤未来、大西幹夫、KOSUGE1-16、田附勝、田村友一郎、西澤徹夫・浅子佳英・森純平、八戸クリニック街かどミュージアム浮世絵コレクション、桝本佳子、向井山朋子
ディレクター|
吉川由美(アートプロデューサー、八戸市新美術館運営検討委員会委員、八戸市新美術館建設工事設計者選定プロポーザル審査委員会委員)
会場構成|
西澤徹夫、浅子佳英、森純平(八戸市美術館設計者)
展覧会概要
会期|2021年11月3日(水・祝)〜2022年2月20日(日)
開館時間|10:00~19:00[入場は18:30まで]
休館日|火曜日[祝日の場合はその翌日]、12月31日、1月1日
観覧料|一般1,300円(1,100円)/高校生・大学生700円(500円)/小・中学生200円(100円)
※( )内は20名以上の団体料金
※未就学児、八戸市内および近隣町村(三戸町、五戸町、田子町、南部町、階上町、新郷村、おいらせ町)の小・中学生は無料 ※市内の65歳以上の方、障がい者手帳をお持ちの方とその付添者1名は半額
※向井山朋子の作品については、11月14日実施のパフォーマンスを収録した映像を12月末(予定)より展示を行います。
※八戸クリニック街かどミュージアム浮世絵コレクションは、前期(11/3〜12/20)と後期(12/22〜2/20)で展示替えを行います。
※そのほか一部作品の展示替えを予定しています。
アートファーマープロジェクト
・かだるアート 浮世絵編
浮世絵文化について学び、語り、自分なりの展覧会をつくるプロジェクト。
日時|2021年12月16日(日)、2022年1月16日(日)、2月13日(日)、3月13日(日) 各回14:00~17:00
※各回ごとにご参加いただけます。
・種さがしラボ
100年後の八戸を創造するための 「種」を探すアイデアミーティング。
期間|2022年1月以降開催予定
・向井山朋子パフォーマンス「gift」
ピアニストの向井山朋子と共にパフォーマンスを創ります。
期間|2021年10月〜11月
関連イベント
・田附勝トーク&デコトラミーティング
2021年11月23日(火・祝)17:00〜19:00
・田村友一郎×石倉敏明 アーティストトーク「予期せぬギフト」
2022年1月15日(土)14:00〜15:30
・江頭誠アーティストトーク&毛布のお花贈呈式
2022年1月23日(日)14:00〜15:30
主催|八戸市美術館
協賛|南部電機株式会社
協力|一般財団法人VISITはちのへ、八戸三社大祭運営委員会、八戸三社大祭山車祭り行事保存会、はちのへ山車振興会
後援|NHK青森放送局、青森放送、青森テレビ、青森朝日放送、めんこいテレビ、八戸テレビ、デーリー東北新聞社、東奥日報社、エフエム青森、コミュニティラジオ局BeFM
展覧会情報
ディレクターズメッセージ|
飢えや疫病という生命の危機を生き抜くために、人間は祈り、祭りを行ってきました。
2010年に八戸ポータルミュージアム はっちの文化事業ディレクターとして八戸に通い始めて以来、私は八戸三社大祭などの祭りが、このまちの文化形成に大きな影響を与えているという確信を年々深めてきました。神輿行列に芸能が加わり、山車を人々が自らの手でつくり始めたことにより、世代を超えた多様な立場の市民が共に創るプロセスが祭りに埋め込まれました。こうして、祈りのための“創造”という“ギフト”は、人々を楽しませる“ギフト”となり、創造の場を支え合う“ギフト” の精神が育まれてきました。
この創造の場は、創る喜びだけでなく、利他の心、孤独からの解放といった目に見えぬ多くの“ギフト”をもたらしています。一方で、“ギフト”は、利用されやすく壊れやすいものでもあります。私たちが“ギフト”を意識的に受け取り、次へと贈らなければ、この輪は簡単に途絶えてしまいます。
新たな疫病の危機に直面する今、“ギフト”の心は、霧のなかの道を照らし出します。このまちが長い時のなかで育んだものは、100年後の世界を創造する種なのかもしれません。
多くの市民の皆さんと共に創り、支えていただきながら、準備を進めてきたこの企画は、まさに“ギフト” の賜物です。
ご協力いただきました皆さんに、心から感謝申し上げます。
この“ギフト” が、ずっとずっとめぐり続けますように。
「ギフト、ギフト、」ディレクター 吉川由美
はじめに|
「ギフト、ギフト、」は、八戸を代表する祭りである八戸三社大祭を出発点に、アートを通して“ギフト” の精神を見つめます。展覧会では、300 年もの間続く八戸三社大祭を、“ギフト” ととらえるところから出発し、普遍的な視点で“ギフト”を思考することへと続いていきます。また、山車づくりの場のような、美術館らしい創造的な“ギフト” の場として、さまざまなプロジェクトを皆さんと実施していきます。
人類学者マルセル・モースは『贈与論』(1925)のなかで、「贈る」「受け取る」「お返しする」ことの循環によって成り立つ未開社会の交換儀礼や、人や集団の関係性を保つ互酬的なやりとりを“贈与=ギフト” ととらえました。この企画における“ギフト” もまた、モースが述べた経済行為では手に入らない「もの」や「こと」、そのやりとりを指しています。その特徴には、自分が受けた恩をその贈り主ではなく、次の誰かに時を超えて返していく性質があり、「ギブ&テイク」や「win-win」よりも拡張的、循環的な意味を込めて、タイトルを「ギフト、ギフト、」としました。八戸三社大祭に見られる、誰もが「贈り手」であり「受け手」であるようなあり方は、右肩上がりの成長に幸せを求める時代から変化した現代社会に示唆を与えるとともに、私たちの美術館が目指すアートのあり方と重なるものとなります。