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美術館について

種を蒔き、人を育み、
100年後の八戸を創造する美術館

~出会いと学びのアートファーム~

八戸市美術館は、アートを通した出会いが人を育み、人の成長がまちを創る「出会いと学びのアートファーム」をコンセプトとしています。
従来の「もの」としての美術品展示が中心だった美術館とは異なり、「ひと」が活動する空間を大きく確保することで、「もの」や「こと」を生み出す新しいかたちの美術館として、新たな文化創造と八戸市全体の活性化を図ることを目指します。
誰もが気軽にアートに触れられる機会を提供する「展覧会」と、市民とともにアートを介して出会いや学びを誘発するさまざまな「プロジェクト」を展開していきます。また、八戸の美術を中心とした「コレクション」を未来へと引き継いでいきます。それらによって、従来の立場や枠組みを超えて、アートと人との出会いの輪が広がり、そこから得た学びが栄養となって人々の感性や創造力が育まれ、まちや暮らしをより豊かなものにする美術館を実現します。
そのために、美術館活動に主体的に関わる市民を、アートでコミュニティを耕して育む「アートファーマー」と呼び、アーティストや専門家、美術館スタッフなどとともに学び合いながら、さまざまな経験ができる環境をつくり出します。また、美術館活動を一緒に行う市民や団体、教育機関、企業などを「共創パートナー」と呼び、地域の新しい価値を生み出していきます。
さらに、「学校連携」として、子どもたちの力を伸ばして自ら新しい価値をつくり出せる人を育むために、教育委員会や小中高校との連携を図り、美術館から学校へと広がっていくプログラムを行うとともに、市内の大学・高専が有する専門性と連携して、経済や福祉、まちづくりなど、アートの力を他業種や他分野と融合させるプログラムを行います。

これまでとこれからの美術を、八戸のまちや人、さらに世界につなげていく美術館

八戸市美術館は、1986年の開館より活動を続けてきましたが、現在の美術を受け止める場所が必要とされたことから、2021年、新しく生まれ変わりました。
美術は時代の表現であることから、時代とともにさまざまに変化します。現在の美術は、完成されて変わることのない「もの」だけでなく、鑑賞する人が関わることで生まれる「こと」としての作品もつくられています。そんな美術の広がりを受け止める新しい美術館のあり方を目指して、世界的に見てもユニークな建築が完成しました。市民が日常的に活動を行う「ジャイアントルーム」を中心に、さまざまな美術表現に対応する個性的な部屋が取り巻く、画期的な美術館です。
その中で、「展覧会」と「プロジェクト」という2つの活動を行います。展覧会は、完成された展示を鑑賞することができる、多くの美術館で中心となる活動です。一方のプロジェクトは、市民が集まり、そこにアーティストや美術館スタッフが加わることで、さまざまな「もの」や「こと」を創造する、常に変化が続く活動です。また、この美術館は、八戸で生まれたり、生活している人たちがつくった、「八戸の美術」を中心に集めたコレクションを持っています。このコレクションをめぐり、さまざまな対話を行うことで、八戸のことや、つくられた時代を考えていきます。
この美術館では、これまでの美術とこれからの美術を、八戸のまちや生活する人たち、さらに世界中の人たちにつなげていくことを目指します。ここから、みなさんとともに、どのような「もの」や「こと」が生み出されていくのか、楽しみにしていてください。

八戸市美術館館長

佐藤慎也

館長

館長プロフィール画像

佐藤慎也

さとうしんや

1968年東京都西東京市生まれ。1992年日本大学理工学部建築学科卒業。1994年同大学院理工学研究科博士前期課程建築学専攻修了。1994~95年I.N.A.新建築研究所。1996年~日本大学理工学部建築学科。現在、同教授。一級建築士。博士(工学)。
2006~07年ZKM(カールスルーエ・アート・アンド・メディアセンター)展示デザイン担当。2016~17年八戸市新美術館建設工事設計者選定プロポーザル審査委員会副委員長、2017~21年同運営検討委員会委員。2021年~八戸市美術館館長。
専門は芸術文化施設(美術館、劇場・ホール)の建築計画・設計。そのほか、アートプロジェクトの構造設計、ツアー型作品の制作協力、まちなか演劇作品のドラマトゥルクなど、建築にとどまらず、美術、演劇作品制作にも参加。
建築には、「アーツ千代田 3331」改修設計(メジロスタジオと共同、2010年)など。美術・アートプロジェクトには、『+1人/日』(2008年、取手アートプロジェクト)、「としまアートステーション構想」策定メンバー(2011~17年)、「長島確のつくりかた研究所」所長(2013~16年)、『←(やじるし)』プロジェクト構造設計(長島確+やじるしのチーム、2016年、さいたまトリエンナーレ)、『みんなの楽屋』(あわい~、2017年、TURNフェス2)など。演劇には、『個室都市 東京』ツアー制作協力(高山明構成・演出、2009年、フェスティバル/トーキョー)、『アトレウス家シリーズ』(2010年~)、『境界を越えて アジアシリーズのこれまでとこれから』会場構成・演出(居間 theaterと共同、2018年、フェスティバル/トーキョー)など。

Daici Ano

互いに学び合い、多様な活動を支える2種類の空間

八戸には地域の風俗や民俗に根ざした深い文化があり、特異で美しい風景があります。新しい美術館は、これらの文化資源を種として拾い上げ、調査研究することで実らせ、新しく価値付けすることで育て、そして誰でもアクセスできる形に収穫=展示・収蔵することが目指されています。ここでは誰もが何かについての専門家であるという認識のもと、市民や美術館スタッフ、アーティストが立場を入れ替えながらさまざまな活動が生まれていくことが期待されています。したがってわたしたちは、誰もが互いに学び合い、そのことが何かをつくり出すことのきっかけになったり、作品になったりするような活動が生まれるためには、2種類の空間が必要だと考えました。教える人と学ぶ人が同じ場を共有でき、可動間仕切りや家具で自在に場所をつくることであらゆる活動を可能とする「ジャイアントルーム」と、専門的に深く学び、違う専門性に出会うことができる、展示や制作といったさまざまな機能に特化した「個室群」です。これらの自由な組み合わせによって、つくったり考えたり集まったり、出会ったり発見したり気づいたりといった豊かな機会が生まれることが、新しい美術館に必要だと考えています。

八戸市美術館建築設計者

西澤徹夫・浅子佳英・森純平

建築家

西澤徹夫プロフィール画像

西澤徹夫

にしざわてつお

1974年京都府生まれ。2000年東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了。青木淳建築計画事務所にて「青森県立美術館」、「ルイヴィトン銀座店」担当。2007年西澤徹夫建築事務所開設。主な作品に「東京国立近代美術館所蔵品ギャラリーリニューアル」(2012年)、「京都市京セラ美術館」(2019年)。「映画をめぐる美術──マルセル・ブロータースから始める」展(2014年)、「Re: play 1972/2015―「映像表現 ’72」展、再演」展(2015年)(以上東京国立近代美術館)、「今和次郎 採集講義」展(2009年、パナソニック汐留ミュージアム、青森県立美術館)、「シンコペーション:世紀の巨匠たちと現代アート」展(2019年、ポーラ美術館)、ほか展覧会会場デザイン多数。2020年京都建築賞、AACA最優秀賞、第62回毎日芸術賞、優秀建築選2020JIA日本建築大賞、2021年日本建築学会賞(作品)受賞。

浅子佳英プロフィール画像

浅子佳英

あさこよしひで

1972年兵庫県神戸市生まれ。建築家、編集者。2010年東浩紀とともにコンテクチュアズ(現ゲンロン)設立、2012年退社。2007年タカバンスタジオ設立。2021年出版機能を追加し株式会社PRINT AND BUILD創立。第一弾として『デザインの現在 コンテンポラリーデザイン・インタビューズ』(土田貴宏著)出版。建築作品に「gray」(2015年)など。主な論考に「コム・デ・ギャルソンのインテリアデザイン」『思想地図β Vol.1』(2010年)。共著に『レム・コールハースは何を変えたのか』(2014年)など。商業空間を通した都市のリサーチとデザインを得意とし、街中のショップをリサーチする「TOKYOインテリアツアー」、都市をリサーチした展覧会「TOKYOデザインテン」、公共空間のリサーチ「パブリック・トイレのゆくえ」(2017年~)の企画監修などを行う。

森純平プロフィール画像

森純平

もりじゅんぺい

1985年マレーシア生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科建築専攻修了。在学時より建築から時間を考え続け、舞台美術、展示、まちづくりなど、状況を生み出す現場に身を置き続ける。2013年より千葉県松戸を拠点にアーティスト・イン・レジデンス「PARADISE AIR」を設立。世界のアーティストが街に滞在している。主な活動に遠野オフキャンパス(2015年~)、東京藝術大学美術学部建築科助教(2017年~)。「たいけん美じゅつ場VIVA」 設計/ディレクター(2019年~)。

建築概要

建築物名称

八戸市美術館

所在地

青森県八戸市大字番町10番地4

敷地面積

6,732.14㎡

建築面積

3,080.21㎡

延床面積

4,844.95㎡

階数

地上3階

最高高さ

19.12m

構造種別

鉄骨造

工期

本棟2019年4月6日~2020年12月28日
広場2021年3月22日〜2021年9月18日

設計・監理

コンセプト西澤徹夫・浅子佳英・森純平
建築西澤徹夫建築事務所・タカバンスタジオ設計共同体
構造オーノJAPAN
機械・電気森村設計
サインLABORATORIES
家具西澤徹夫建築事務所・タカバンスタジオ設計共同体
カーテン安東陽子デザイン
照明アドバイザー飯塚千恵里
音響アドバイザー森純平・森律子
本棟・広場工事監理西澤徹夫建築事務所・タカバンスタジオ設計共同体

施工

建築鴻池組・田名部組・東復建設 特定建設工事共同企業体
電気設備ユアテック・溝口電気 特定建設工事共同企業体
機械設備ダイダン・サカモト・葵 特定建設工事共体
広場穂積建設工業株式会社

工事費

本棟約32億円(用地費を除く)
広場約2億1千万円(用地費を除く)

主要室面積

室名 面積
( ㎡ )
天井高(mm)
ジャイアントルーム 834.16 17,630
ホワイトキューブ 516.55 5,000
ブラックキューブ 45.90 3,500
コレクションラボ 101.48 3,500
スタジオ 108.00 9,770
ギャラリー1・2 215.46 3,700
会議室1・2・3 61.22 –
ワークショップルーム 62.63 –
アトリエ 65.69 –
ティールーム 52.65 –
多目的室 93.16 –
事務室 94.27 –
収蔵庫1・2・前室 689.52 –
一時保管庫 51.63 –

市民とともに八戸の未来を支える「八戸市新美術館」

シンボルマークについて

このシンボルマークは、美術館機能の特徴である「ジャイアントルーム」から発想しています。大きなスケール感を表す歪み。その上に現れる大きな円形の「余白」。このシンボルによって支えられた余白を「八戸の未来」としましょう。ジャイアントルームを表したシンボル自体が、それを支える土台に見えてきます。ジャイアントルームを通して市民とともに生み出されたものごとが、未来の余白に次々と描かれていく──このシンボルマークはそのような姿をイメージしています。わたしは、八戸市美術館がこれからの八戸の未来を描き続けるための「大きな土台」になってほしいと願っています。

サインについて

ジャイアントルームでひときわ目立つ、一見美術館らしくない大きなサインは、空港や駅などの公共空間のサインを参照しています。人々が行き交い、そこで賑やかにやりとりをする。サインが機能を超えてそのような場を演出する助けになればとの思いをこめました。

八戸市美術館グラフィックデザイナー

加藤賢策(LABORATORIES)

グラフィックデザイナー

加藤賢策(LABORATORIES)プロフィール写真

加藤賢策(LABORATORIES)

かとうけんさく

1975年生まれ。株式会社ラボラトリーズ代表取締役。アートディレクター/グラフィックデザイナー。武蔵野美術大学・横浜国立大学非常勤講師。1995年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科入学。2000年同学科卒業。2002年同武蔵野美術大学大学院視覚伝達デザインコース修了(プログラミングによるダイアグラム/地図の研究)。同年より視覚伝達デザイン学科研究室に助手として勤務。2006年株式会社東京ピストル設立。同社退社後2013年7月株式会社ラボラトリーズ設立。アートディレクター/デザイナーとしてグラフィックデザイン、ブックデザイン、WEBデザイン、サインデザインなどを手がける。

1986

1986年11月21日、八戸市の中心市街地である番町に八戸市美術館は開館しました。青森県内で最初の博物館法に基づく美術館であり、八戸市博物館の分館として設置されました。それは、もともと八戸税務署だった建築を美術館に改修したものでした。

1986

開館当時の⼋⼾市美術館(1986)

開館当時の⼋⼾市美術館(1986)

開館当時の⼋⼾市美術館(1986)

「八戸の戦後画壇」展示風景(2016)

2017年4月2日に閉館するまでの約30年の間に、数多くの展覧会を開催しました。コレクションを活かした展覧会や、国内外のアーティストを紹介する展覧会など、幅広いジャンルの美術品を展示してきました。また、地域ゆかりの美術品の収集と保管にも努め、閉館までに約3,000点ものコレクションを収蔵するに至っています。

市民が展示室を借りて個展やグループ展を開催するなど、芸術活動の発表の場としての役割も持っていました。また、教育普及にも力を入れており、ギャラリートークはもちろんのこと、子どもから大人まで楽しめる創作講座を開催しています。

年賀状版画教室(1997)

年賀状版画教室(1997)

親⼦でフィンガーペイント(2006)

親⼦でフィンガーペイント(2006)

南郷アートプロジェクト(2015)

南郷アートプロジェクト(2015)

八戸工場大学(2018)

八戸工場大学(2018)

「八戸ポータルミュージアム はっち」(2011)の開館をはじめ、八戸市では「アートのまちづくり」の推進が始まりました。その一環として、「南郷アートプロジェクト(2011〜20)」、「八戸工場大学(2013〜20)」といったアートで地域を再発見するプロジェクトを始動させます。
このようななか、美術館は2011年に教育委員会からまちづくり文化観光部(当時)へと所管が変わり、まちづくりの役割も担うようになりました。活動が多様化するなか、長らく使われてきた美術館の建築物には、耐震性の問題や、収蔵・展示環境拡充の必要性が生じてきました。また、2015年3月には市民団体から提出された新美術館の建設を求める陳情書が議会で採択されるなど、市民からも八戸市によりふさわしい規模と機能を持つ美術館設置を求める声が上がります。

設計者選定プロポーザル(2017)

設計者選定プロポーザル(2017)

設計者による関係者プレゼン(2017)

設計者による関係者プレゼン(2017)

2016年4月、本格的な新美術館整備が始まりました。青森銀行八戸支店新店舗の整備と合わせた一体的な協調開発を行うことにより事業用地を拡大するとともに、新しい美術館のビジョンを示す八戸市新美術館整備基本構想を策定し、公募型プロポーザルにより西澤徹夫建築事務所・タカバンスタジオ設計共同体を設計者として選定しました。その後は、専門的な知識や経験を持つ有識者とともに、実際に美術館を使う市民からの意見を取り入れながら整備を進めていきました。

建設中の八戸市美術館(2020)

建設中の八戸市美術館(2020)

2021

そして、2021年11月3日、八戸市美術館は生まれ変わって開館しました。

図録・記録集

その他刊行物(年報、研究紀要、要覧、小冊子など)

その他の刊行物一覧